8月末にシンガポールへ研修に行ってきました。
先日がその報告会でしたので、一連の内容をお伝えしたいと思います。
1.公認会計協会主催のシンガポール研修とは?
・国際経験に乏しい会計士に海外へ触れる機会を提供するためのもの。
・例年8~9月に実施、現地に1週間ほど滞在する。帰国後12月頃にレポートを提出。
・資金は、故岡本丸夫先生が拠出されたファンドである岡本ファンドが負担するため、原則として参加者の費用負担はない。本研修自体、岡本先生の遺志である。
・ファンドの残高がなくなり次第終了であり、長く続くものではない。
・応募の開始と締切は3~4月頃。CPEニュースレターに載っている。
・中小や個人の事務所の会計士のみが参加でき、TOIECは730点以上が必要。面談もあり。
・例年10人弱が派遣団として研修に参加できる。今年は女性が多く、女性4名・男性2名であった。
・参加者は、団長・副団長・航空券手配・レポート取り纏め・現地へのお土産・会計担当などに役割分担される(私は会計でした)。
2.シンガポール研修の内容
・シンガポールの会計・監査・税務の講義の受講
・現地企業や会計事務所などへの訪問
・英語によるプレゼンテーションの実施
・プレゼンの相手はシンガポール人会計士であり、こちらが出した複数のテーマから先方が選択(私は日本でのIPOの傾向をテーマにしました)
・国内で事前研修があるが、現地での研修はほぼすべて英語で実施
3.研修の感想
大学での講義は正直難解なものもあったが、国内事前研修などである程度内容を予測した上で講義に臨めたため、何とか理解することはできた。講師によっては質問を投げかけてくるので、コミュニケーションという意味でも有益であった。身振り手振りを交えた講義の進め方は、日本でも生かせると感じた。
学外訪問では、シンガポールでの仕事の実情を聞くことができて大変勉強になった。シンガポールという国の成り立ちや国民性を知った上で現場の声を聞けたので、シンガポール特有のメリット、デメリットをより一層理解することができたと思う。
宿泊施設は、大学から至近であり、部屋もきれいでモールも近く非常に便利であった。個人的にはルームサービスを頼んだ際にロボットが運んできたことには大変驚いた。講義で、シンガポールはデジタル技術に大変な力を入れていることを聞いていたが、正にその状況を垣間見ることができた。
現地の日本人会計士との交流会では、様々なお話を伺うことができた。その中で最も印象的だったのが、やってみないと何も始まらないということであり、チャレンジングな方々に囲まれて大変刺激を受けた会食であった。また、共通の知り合いが何人か挙がったが、これも会計士業界の狭さを実感する場面であり、会計士同士の繋がりを大事にしないといけないと痛感した。
南洋理工大学でのキャンパスツアーでは、キャンパスの凄さもさることながら、学生達の勤勉さと明るさに非常に感心した。以前、シンガポールは日本を参考に成長したらしいが、現在は完全に抜かされており、学生の質を比べてもこの差は当然だと思った。この点は日本に対して危機感を覚えた。国策として教育に力を入れていることも影響しているだろう。
シンガポールは、非常に小さい国であり、水や石油などの資源もほとんどない。しかし、地理的な強みを生かして積極的に海外からの投資を呼び込み、著しい発展を遂げてきた。自国の強みと弱みを理解した上で、強いリーダーシップの下、一貫した政策を策定・実行してきた点は見習うべきである。先にも述べたが、近年はデジタル技術や医療や化学の分野に力を入れているとのことであった。
シンガポールは基本的には親日であり、治安も非常に良いため、日本からの海外進出への足掛かりに適した国である。海外研修の地としても非常にふさわしいと思う。一方で、いわゆるシングリッシュの聞き取りにくさや、親日であるが故にそれに甘えてしまうというデメリットもあり、団員によっては不足を感じることもあるだろう。しかし、本研修の目的が、海外経験の乏しい会計士への機会の提供であることを考えれば、シンガポール以上に適した国はないと思える。